胚の凍結保存について
- どのような場合に凍結保存を行うの?
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体外受精-胚移植法(顕微授精-胚移植法を含む)を受けられる方の中で、以下の①~④のような場合に、凍結保存が可能な胚の凍結保存を行います(余剰胚凍結保存または全胚凍結保存)。第2子を望む時や、残念ながら妊娠・出産に至らず不妊治療を継続する場合は、凍結保存した胚を融解(解凍)し、移植することが出来ます。
① 余剰胚が多数得られた場合(多胎妊娠を防ぐ)
多胎妊娠を防ぐため、移植個数は1個または最大で2個までと(国内のガイドラインに基づき決定)しています。余剰胚が得られた場合、残りの質の良い胚を凍結保存します。(治療のリスク参照)
② 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の場合
卵巣を刺激する薬剤に、卵巣が過剰に反応して、卵巣が腫れたり、腹水や胸水がたまったりして卵巣過剰刺激症候群になる可能性があります。また、妊娠すると絨毛よりhCGホルモンが分泌され、卵巣を刺激し、卵巣過剰刺激症候群の発症を促進します。そのため、卵巣過剰刺激症候群になりそうな場合は、胚移植の個数を少なくし、残りの胚を凍結保存するか、
移植を中止し、全ての胚を凍結保存します。(治療のリスク参照)③ 着床環境の改善が必要な場合
刺激周期の治療は、ホルモン剤を投与して多くの卵胞を育てるので、その影響で着床する子宮内膜の環境が胚にとって良い状態ではない場合があります。また、自然周期でも、移植までに、内膜が厚くならず、移植ができない場合があります。その場合は移植を中止し、全ての胚を凍結保存します。
④ 医学的適応による場合
がん治療(手術・抗がん剤・放射線)などの影響で、卵巣機能低下が予想される患者様に、胚の凍結保存を行っております(未婚の方の場合は未受精卵子の凍結保存を行います)。
胚盤胞の凍結保存について
- 今回は「胚盤胞の凍結保存」といわれたけれど
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採卵後に培養した受精卵を、受精後1~2日目の「初期胚」より長く培養し、受精後5~6日目の「胚盤胞」まで発育させて凍結保存する方法です。当院では患者様とご相談の上、凍結保存可能な受精卵の個数と、発育状況に応じて「胚盤胞」まで発育させてから凍結保存をしています。
凍結保存できる個数や状態により、一部を「初期胚」で凍結保存し、残りを「胚盤胞」で凍結保存する場合もあります。
凍結保存胚-胚移植とは
- 「凍結保存胚の融解-胚移植法」とは
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凍結してある胚を融解(解凍)して子宮内に移植する方法です。
あらかじめ凍結保存してある胚を使用するため、卵巣刺激や採卵を行うことなく、移植が可能です。
凍結保存胚の融解-胚移植法による妊娠・出産がはじめて報告されたのは、1983年で、当院では開院当初より多くの患者様が妊娠・出産しています。
通常の新鮮胚移植と、融解後の胚移植による妊娠・出産を比較した場合、胎児の発育、周産期のリスク、産科的合併症、先天奇形などに関して差はないといわれています[凍結保存胚の融解-胚移植法の方法]
凍結保存胚の融解-胚移植法の治療は大きくわけて以下の2つの方法があります。当院では、主に②の「ホルモン補充周期法」で治療を行っております。
①自然周期法
ホルモン補充を行なわずに自然排卵の後に胚移植をする方法です。
ホルモン剤を使用しなくてよいというメリットがある一方、月経周期が順調で、自然な状態のままで、子宮内膜の着床環境が良い状態である必要があります。また、移植に最適なタイミングを決定するのに、ホルモン補充周期法と比較すると、スケジュールが立てにくく、通院回数が多くなるというデメリットもあります。②ホルモン補充周期法 *当院では主にこちらを採用
自然周期を抑えて、卵胞ホルモン(エストロゲン)を投与し、着床環境を整えてから移植する方法です。ホルモン剤の使用が必要になるものの、月経周期が不順な場合や、子宮内膜の着床環境がよい状態になりにくい方には適しています。また、ホルモン補充でコントロールするため、自然周期法と比較して、スケジュールが立てやすく、通院回数は少なくて済みます。
当院ではこちらの方法を採用し、移植する周期の1~2周期前から、低用量のピルを服用し、排卵をコントロールしながら治療を進めています。