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不妊症検査

不妊症の原因を見つけるため、当院で行っている検査は主に以下の検査があります。
検査は初診時に必ず受けていただくものや、月経周期にあわせて行うもの、医師の判断により行うものがあります。
ご夫婦それぞれの検査結果は、ご夫婦間で共有の上、治療を進めていきます。原則としてパートナーの情報は、必要に応じ奥様またはご主人様にお話しします。
時期
検査
内容
月経中(2~3日目)
FSH/LH測定
  • 血液中のホルモン量を調べることで卵巣機能不全、排卵障害、卵胞の発育、成熟などが分かります。
プロラクチン測定/TRH負荷試験
  • プロラクチン(乳汁分泌)の異常、またはプロラクチンが正常であっても、夜間に上昇して排卵障害や黄体機能不全を起こすような潜在性高プロラクチン血症の有無を調べます。
  • プロラクチンの分泌異常が、妊娠維持に不利な免疫状態に誘導することがあります。
低温期/高温期
エストラジオール/プロゲステロン測定
  • 血液中のホルモン量を調べることで卵巣機能不全、排卵障害、子宮内膜の状態、黄体機能不全(着床、妊娠継続を維持する黄体ホルモンの分泌不足)などが分かります。
低温期
子宮卵管造影検査
  • 子宮内に造影剤を注入し、造影剤が子宮→卵管→腹腔内に流れ出す様子を撮影することで卵管の異常を見つけるレントゲン検査です。
子宮鏡検査
  • 子宮内に内視鏡を挿入して、子宮内の状態や卵管の入り口の状態を観察する検査です。
  • 着床障害、不育症につながるような、子宮の内側にできた子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腔内の癒着、子宮奇形などの異常がないかを調べます。
通水検査
  • 子宮腔に圧力をかけながら、生理食塩水を卵管内に送り込んで、水圧の変化などから卵管の通過性を検査する方法です。
排卵期
頚管粘液検査
  • 子宮頚部から分泌される頚管粘液の量、粘り気、透明度から排卵が近いか、頚管粘液が正常に分泌されているかが分かります。
排卵後
ヒューナーテスト
  • 夫婦生活後に子宮頚管の粘液内にある精子の状態を調べます。
月経終了後から次の月経が始まる前
慢性子宮内膜炎検査
  • 慢性子宮内膜炎は子宮内膜が「形質細胞」という血液細胞の一種(Bリンパ球)の浸潤を伴う炎症状態にあります。子宮間質への形質細胞の出現の有無を調べます。
月経時期に関係なく行う検査
抗精子抗体検査
  • 精子が入ると、それに対する免疫反応として、頚管粘液、子宮腔、卵管内に現れ、精子の表面に結合し、精子の動きを止めてしまう抗体の有無を調べます。
NK(ナチュラルキラー)細胞活性検査
  • 胎児の遺伝子のうち半分は父親由来(母親からすると異物)であるため、これを異物として排除してしまう免疫異常が起きていないか調べます。
Th1/Th2
  • Th1/Th2(免疫細胞)のバランスが崩れると、着床障害や流産を引き起こします。Th1/Th2(免疫細胞)のバランスに問題がないか調べます。
ビタミンD検査
  • ビタミンDの不足(ビタミン欠乏症)を調べます。
  • ビタミンDが不足すると、卵の数や質、妊娠率の低下、不育症、妊娠合併症(妊娠中毒症、妊娠糖尿病、低体重児など)につながります。
亜鉛/銅検査
  • 亜鉛の不足と亜鉛/銅の比を調べます。
  • 亜鉛は妊娠するために重要な栄養素の一つです。
経膣超音波検査
  • 子宮、卵巣の状態を見ることができ、子宮内膜の厚さ、卵胞の大きさ(排卵日の予測)、子宮筋腫、子宮内膜症(チョコレート嚢腫)、子宮内膜ポリープ、多嚢胞性卵巣、卵巣嚢腫などの有無が分かります。
初診時に行う検査
甲状腺ホルモン検査
  • 甲状腺機能異常の有無を調べます。
  • 甲状腺機能異常の影響で、卵巣機能が低下、流産率が上昇します。
  • 異常が見つかった場合は専門医へ紹介します。
  • 抗CL/β2GPI抗体
  • ループスアンチコアグラント
  • 抗フォスファチジルエタノールアミンIgG/IgM
  • 抗カルジオリピンIgG/IgM
  • 不妊症・不育症につながるような血栓症を引き起こす抗体が血液中にできていないか調べます。
  • プロテインC活性検査
  • プロテインS活性検査
  • 第Ⅻ因子凝固活性検査
  • プロテインCやプロテインSが減少し、凝固異常により血栓ができやすくなっていないか調べます。血栓ができると胎児へ流れる血流が悪くなります。
クラミジア抗体/抗原検査
  • クラミジアトラコマティスという病原体が現在感染している(感染していた)か調べます。
  • 感染により、頚管卵管閉塞や卵管周囲癒着などを起こし、不妊の原因となったり、異所性妊娠、流産を引き起こしたりする可能性があります。
抗核抗体/抗DNA抗体
  • 自分の身体の組織を攻撃してしまう自己抗体が血液中にできていないか調べます。
  • 陽性の場合、受精卵、胎児が攻撃されてしまいます。
AMH
  • AMHとは発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、女性の卵巣の予備能(卵巣に残っている卵胞のことです)を知る指標になると考えられています。
  • AMHにより、残存する卵胞数を測定し、卵巣年齢が何歳位か推定することができます(但し、卵胞の中に残っている卵子の数を知る目安にもなりますが、質までは知ることはできません)。
男性の検査
精液検査
  • 精液量、精子濃度、運動率、運動の質などを調べます。
ホルモン検査(FSH/LH/テストステロン)
  • 精子をうまく作る妨げになるホルモン異常がないかを調べます。

不育症検査

不育症とは

不育症とは、流産や早産または死産を繰り返し、元気な赤ちゃんを得られない状態をいいます。
2回連続して流産することを「反復流産」、3回以上流産を繰り返すことを「習慣性流産」といいます。不育症の大部分を占めるのが「習慣性流産」といわれています。
検査により原因が特定できれば、適切な治療を行うことにより、流産の確率を下げることができます。
免疫異常によるもの

項目
説明
a)自己免疫異常①
内容
自己抗体陽性の場合、自分の身体の組織を攻撃してしまい、胎児が攻撃されてしまう。
流産しやすい時期
妊娠初期~妊娠後期
検査
抗核抗体検査、抗DNA検査(採血)など
治療の方針
「漢方療法」*1
b)自己免疫異常②
内容
抗体により血栓ができやすくなる。血栓ができやすいと、胎盤の血管が細いため、胎児へ流れる血流が悪くなる。
流産しやすい時期
妊娠初期~妊娠後期
検査
抗リン脂質抗体検査 *2
治療の方針
「漢方療法」、「低容量アスピリン療法+ヘパリン療法」*1
c)同種免疫異常
内容
胎児の遺伝子のうち半分は父親由来(母親からすると異物)であるため、これを異物として排除してしまう。
流産しやすい時期
妊娠初期~妊娠後期
検査
NK(ナチュラルキラー)細胞活性検査、Th1/Th2検査(採血)など
治療の方針
「イントラリポス点滴」、「タクロリムスの内服」
凝固異常によるもの

項目
説明
内容
血液の凝固異常(血液が固まりやすくなる)により血栓ができやすくなる。血栓ができやすいと、胎盤の血管が細いため、胎児への血流が悪くなる。
流産しやすい時期
妊娠初期~妊娠後期
検査
プロテインC活性検査、プロテインS活性検査、第Ⅻ因子凝固活性検査(全て採血)など
治療の方針
「低容量アスピリン療法」、「ヘパリン療法」単独または併用
症例により「漢方療法」も併用
内分泌代謝異常によるもの

項目
説明
a)
内容
着床、妊娠継続を維持する黄体ホルモンの分泌不足による黄体機能不全
流産しやすい時期
妊娠初期
検査
黄体ホルモン採血検査
治療の方針
黄体ホルモンの内服(デュファストン錠など)や注射(プロゲホルモンなど)
b)
内容
プロラクチン(乳汁分泌)の分泌異常により、妊娠維持に必要なホルモンが十分に分泌されない。
流産しやすい時期
妊娠初期
検査
TRH負荷試験、プロラクチン採血検査
治療の方針
カバサールの内服
c)
内容
甲状腺機能異常の影響で卵巣機能が低下することによるホルモン異常
流産しやすい時期
妊娠初期
検査
甲状腺ホルモン採血検査(TSH、FT3、FT4)
治療の方針
甲状腺ホルモンの投与、抗甲状腺剤の投与
子宮の形態異常によるもの

項目
説明
内容
子宮筋腫・子宮奇形(双角子宮や中隔子宮など)、子宮腔内癒着などにより着床環境が悪い状態にある場合
流産しやすい時期
妊娠初期
検査
内診検査、経膣超音波検査、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査
治療の方針
状態に応じた手術
染色体異常によるもの

項目
説明
内容
夫婦の双方、またはどちらかに染色体異常がある。
流産しやすい時期
妊娠初期
検査
流産した胎児の絨毛組織の染色体検査 *3、染色体採血検査(夫婦)*4
治療の方針
不育症の夫婦に認められるのは主に「均衡型転座」と呼ばれる染色体異常です。
「均衡型転座」は、染色体の別々の2カ所が入れ替わるもので、染色体の過不足がなく、身体には異常がない染色体異常です。400人に1人の割合で存在するといわれています。
染色体異常そのものを治療することはできませんが、着床前診断(PGT)の対象になる場合があります。
遺伝カウンセリングをお受けになり、今後の対策をご相談してください。
*1:「漢方療法」「低容量アスピリン療法」「ヘパリン療法」については「抗リン脂質抗体症候群の治療について」を参照してください。
*2:「抗リン脂質抗体」を調べるための採血検査項目は、「抗CL・β2GPI抗体」、「ループスアンチコアグラント」、「抗ファスファチジルエタノールアミンIgG・IgM」、「抗カルジオリピンIgG・IgM」などがあります。
*3:流産した胎児由来の絨毛組織の染色体検査では、染色体の数的異常や構造異常などを調べます。
*4:ご夫婦それぞれの染色体の構造異常の有無について調べることができます。
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