先進医療について
先進医療とは厚生労働大臣が認める高度な医療技術や治療法のうち、有効性・安全性の一定基準を満たしているが、保険適用対象外(自由診療)の治療を指します。
当院が承認を受けた先進医療対象の医療技術、治療法、検査を紹介します。先進医療の承認を受けると、保険診療との併用が可能です。
ご希望される方は医師にご相談ください。
実施可能な先進医療
タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養(タイムラプス)
「タイムラプス」とは、顕微鏡と撮影装置が内蔵された培養器で、培養器内でタイムラプス(一定の間隔で)撮影を行うことができる装置です。通常の発育確認は、「1日に1度だけ」、「培養器から受精卵を取り出して」行いますが、タイムラプスを使用すると、移植する受精卵(初期胚・胚盤胞) 選択の際に、通常の観察では知り得ないより多くの受精卵の情報をもとに判断することが可能です。
さらに、受精卵を外環境にさらす必要がないため、培養環境の向上が期待できます。
さらに、受精卵を外環境にさらす必要がないため、培養環境の向上が期待できます。
ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)
「PICSI」とは、DNAの損傷が少なく成熟度の高い精子がヒアルロン酸に結合する特性があることを利用し、精子を選別して顕微授精を行う方法です。
通常、顕微授精の精子の選別は、運動性と形態を視覚的に確認して評価を行います。しかしながら、視覚的な選別のみでは精子のDNA損傷の程度が分からず、染色体異常による異常受精のリスクを回避できません。卵子や卵子を取り巻く卵丘細胞の表面はヒアルロン酸に覆われています。
これまでに、より良く成熟した精子はヒアルロン酸への結合能力が高いこと、また成熟度の高い精子ほど、遺伝子であるDNAにダメージを受けにくいことが明らかになっています。ただし、全ての染色体異常による異常受精のリスクを回避できるわけではありません。
膜構造を用いた生理学的精子選択術(ZyMot(ザイモート) スパームセパレーター)
「ザイモート」とは特殊なフィルター(メンブレン)と精子の運動性を用いる方法で、従来のように遠心分離を行わず、短時間で良好運動精子を回収する方法です。従来法は、運動精子を高濃度に回収できる一方で、遠心処理による精子へのダメージや、活性酸素に長時間さらされることで見た目にはわからない精子DNA断片化(DNAに損傷を負わせてしまうこと)が懸念されてきました。精子DNA断片化率の上昇は、胚発生にマイナスの影響を与え、胚盤胞発生率の低下や流産率の上昇に関連すると考えられています。ただし、この方法は従来法より精子回収量が少ないというデメリットがあるため、原則、顕微授精の場合のみの実施となります。
子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)
「子宮内膜スクラッチ」とは、着床率を向上させるため、子宮内膜の一部を軽くひっかく処置(スクラッチ)方法です。これを治療の前周期に2回行うことで、子宮内膜の修復細胞からサイトカイン(受精卵の着床に重要なたんぱく質)が通常より大量に分泌され、着床率の向上が期待できるといわれています。
胚移植しても反復して妊娠に至らない方が適応となります。
子宮内膜細菌叢検査(EMMA/ALICE)
「EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)」は、子宮内膜に存在する細菌の種類とバランスを分析する検査です。着床や妊娠の成立には、ラクトバチルス属という善玉菌が優勢であることが望ましく、EMMAを用いて妊娠に適した子宮内環境かどうかを評価します。細菌バランスに異常があれば、抗生物質やプロバイオティクスによる治療を行います。
「ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)」は、子宮内膜に慢性子宮内膜炎を引き起こす細菌性病原体の有無を調べる検査です。慢性子宮内膜炎は不妊や反復着床不成功、流産の原因となることが報告されています。原因菌が特定されれば、抗生物質などの治療により子宮内環境の改善が期待されます。
両検査は高温期(月経約15〜25日目頃)に、子宮内膜を採取して行います。胚移植しても反復して妊娠に至らない方、流産を繰り返す方、慢性子宮内膜炎が疑われる方などが適応となります。
「ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)」は、子宮内膜に慢性子宮内膜炎を引き起こす細菌性病原体の有無を調べる検査です。慢性子宮内膜炎は不妊や反復着床不成功、流産の原因となることが報告されています。原因菌が特定されれば、抗生物質などの治療により子宮内環境の改善が期待されます。
両検査は高温期(月経約15〜25日目頃)に、子宮内膜を採取して行います。胚移植しても反復して妊娠に至らない方、流産を繰り返す方、慢性子宮内膜炎が疑われる方などが適応となります。
子宮内膜受容能検査 (ERA)
「ERA検査」は、プロゲステロン投与開始から5日後に子宮内膜が胚の着床に適した状態かどうかを、遺伝子レベルで解析する分子生物学的検査です。受精卵が子宮内膜に着床できる受容期を「着床の窓(Window of Implantation)」と呼びますが、このタイミングには個人差があります。ERA検査では、子宮内膜組織における248個の着床に関連した遺伝子の発現を、次世代シーケンサー(NGS)を用いて解析し、最適な胚移植の時期を個別に特定します。着床の窓にずれがあると、良好な胚でも着床が妨げられる可能性があるため、この検査により移植タイミングを調整することで、体外受精(IVF)の妊娠成功率を高めることが期待されます。胚移植しても反復して妊娠に至らない方が適応となります。
子宮内膜刺激術 (SEET法)
「SEET法」とは、受精卵は受精後5~6日間培養すると胚盤胞に発育します。この胚盤胞が入っていた「培養液のみ」を胚盤胞の移植前に子宮に注入し、その後(通常2日後)胚盤胞移植を行う方法です。胚盤胞が入っていた培養液(SEET液)には、胚盤胞から分泌された着床因子が含まれており、この着床因子をあらかじめ子宮に注入しておくことで、子宮内膜が着床しやすい状態に整えられるといわれています。
二段階胚移植術
「二段階胚移植術」とは、初期胚と胚盤胞を同じ周期に時期をずらして胚移植を行う方法です。一段階目に移植する初期胚がシグナルを送り、子宮は着床の準備を始めます。着床の準備が整った子宮内へ二段階目の胚盤胞を移植することで、着床しやすくなると考えられています。
胚移植しても反復して妊娠に至らない方であり、さらに子宮内膜刺激術(SEET法)を実施したことのある方が適応となります。
胚移植しても反復して妊娠に至らない方であり、さらに子宮内膜刺激術(SEET法)を実施したことのある方が適応となります。
料金表
項目 | 料金 | |
タイムラプス | 33,000円 | |
PICSI | 23,100円 | |
ZyMotスパームセパレーター | 29,800円 | |
子宮内膜スクラッチ | 9,460円 | |
EMMA/ALICE | 68,000円 | |
ERA | 125,000円 | |
SEET法 | 31,790円 | |
二段階胚移植術 | 新鮮胚移植 | 75,000円 |
凍結融解胚移植 | 120,000円 |